SEIKO EYE事件

SEIKO EYE事件(結合商標の類否判断における要部の認定、商標法4条①11)
最高裁判所第二小法廷 平成5年9月10日判決
当サイトにて日付、条文番号など漢数字をアラビア数字に変更

主    文

原判決を破棄する。

特許庁が昭和55年審判第21693号について平成2年5月31日にした審決を取り消す。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

    

 上告代理人㋐の上告理由第二点について
一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 上告人は、昭和50年6月13日、別紙商標目録記載
(一)に示す構成から成る商標(以下「本願商標」という。)につき、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前のもの)別表第23類に属する商品として、商標登録出願をしたところ、昭和55年9月25日、別紙商標目録記載(二)に示す構成から成り、指定商品を同別表第23類「時計、眼鏡、これらの部品及び附属品」とする登録第1064313号の商標(昭和46年8月11日商標登録出願、同49年4月27日設定登録、以下「査定引用商標」といい、右商標権を「査定引用商標権」という。)を引用して拒絶査定がされたので、これを不服として審判請求(昭和55年審判第21693号)をした。
2 特許庁は、査定引用商標権の存続期間が、昭和59年4月27日に終了したため、別紙商標目録記載(三)に示す構成から成り、指定商品を前項記載別表第23類「時計、眼鏡、これらの部品及び附属品」とする登録第1204173号の商標(昭和46年8月11日商標登録出願、同51年6月10日設定登録、同61年商標権存続期間の更新登録、以下「審決引用商標」という。ちなみに、査定引用商標と審決引用商標とは、同一出願人が互いに独立の商標として商標登録出願し、いずれも商標登録されたものであることが記録上うかがわれる。)を引用して、上告人に対して拒絶理由を通知した上、平成2年5月31日、右審判事件につき、上告人の審判請求は成り立たないとの審決(以下「本件審決」という。)をした。本件審決の理由は、本願商標の構成中の「eye」の文字部分からは「アイ(目)」の称呼、観念が生ずるところ、審決引用商標の構成中の「EYE」の文字部分からも「アイ(目)」の称呼、観念が生ずるから、本願商標は商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの)4条1項11号に該当し、商標登録を受けることができないとするものである。
二 原審は、右事実関係の下において、本件審決の判断は正当であるとして、その取消しを求める上告人の請求を棄却した。その理由は、次のとおりである。
1 本願商標は、取引者、需要者に「アイ」と称呼され、「目」を意味すると観念される。
2 審決引用商標の構成中の「SEIKO」は、わが国における著名な時計等の製造販売業者である株式会社服部セイコーの取扱商品ないし商号の略称を表示するものであり、同構成中の「EYE」は、「アイ」と称呼され、「目」を意味すると観念されるところ、株式会社服部セイコーでは、その販売する時計について統一的に「SEIKO」の表示を用いるとともに、各商品を区別するために、「DOLCE(ドルチェ)」、「CADET(カデット)」、「CHARIOT(シャリオ)」、「MAJESTA(マジェスタ)」等のマークを使用していることが取引者、需要者に広く知られている。そうすると、審決引用商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「EYE」の部分は、株式会社服部セイコーの取扱いに係る「EYE」印の商品を表示するものと認識するから、審決引用商標は、「セイコーアイ」のほか、「アイ」とも称呼され、「目」を意味するものとも観念されると認められる。「EYE」の文字が、その指定商品の品質、用途等を表示するものと認めるべき証拠は存しないから、これが一般性、普遍性のある文字であるからといって自他商品を識別する機能がないとはいえない。
三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
審決引用商標は、眼鏡をもその指定商品としているから、右商標が眼鏡について使用された場合には、審決引用商標の構成中の「EYE」の部分は、眼鏡の品質、用途等を直接表示するものではないとしても、眼鏡と密接に関連する「目」を意味する一般的、普遍的な文字であって、取引者、需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有するものではないというべきである。一方、審決引用商標の構成中の「SEIKO」の部分は、わが国における著名な時計等の製造販売業者である株式会社服部セイコーの取扱商品ないし商号の略称を表示するものであることは原審の適法に確定するところである。
そうすると、「SEIKO」の文字と「EYE」の文字の結合から成る審決引用商標が指定商品である眼鏡に使用された場合には、「SEIKO」の部分が取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから、それとの対比において、眼鏡と密接に関連しかつ一般的、普遍的な文字である「EYE」の部分のみからは、具体的取引の実情においてこれが出所の識別標識として使用されている等の特段の事情が認められない限り、出所の識別標識としての称呼、観念は生じず、「SEIKOEYE」全体として若しくは「SEIKO」の部分としてのみ称呼、観念が生じるというべきである。
原審は、株式会社服部セイコーが、同社の販売する時計について統一的に「SEIKO」の表示を用いるとともに、各商品を区別するために、「DOLCE」等のマークを使用していることから、審決引用商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「EYE」の部分は、株式会社服部セイコーの取扱いに係る「EYE」印の商品を表示するものと認識すると判断しているが、株式会社服部セイコーが審決引用商標を使用した指定商品に属する商品を実際に販売しているとの事実は原審の認定していないところであり、また、前記認定のとおり取引者、需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有しない一般的、普遍的な文字である「EYE」が、そうではないこと明らかでありかつ実際に販売されている時計に使用されている「DOLCE」等の文字と同様に株式会社服部セイコーの販売する商品の出所識別標識となる、ということはできない。
これを要するに、前記認定の事情に照らせば、審決引用商標の「EYE」の文字部分のみからは、称呼、観念は生じないというべきであるから、右部分に自他商品を識別する機能がないとはいえないとした原審の説示には、商標の類否に関する法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点の違法をいう論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
四 そして、前記の確定した事実関係の下においては、本願商標から、「SEIKO EYE」若しくは「SEIKO」の称呼、観念が生じないこと、本願商標と審決引用商標とが外観において類似していないことは明らかというべきであるから、本願商標が審決引用商標と類似するとした審決の判断は違法であり、右違法が審決の結論に影響を及ぼすこと明らかである。そこで、本件審決の取消しを求める上告人の請求は理由があるものとして、これを認容すべきである。よって、行政事件訴訟法7条、民訴法408条、96条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

参考画像(商標登録1063413、1204173など 出典:J-PlatPat)

ads-shares-by-moshimo

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする